2026.07.31
人材教育
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「特商法は現場の担当者だけが気をつければいい話……」そう思っている管理職も多いのではないでしょうか。
特定商取引に関する法律(以下、特商法)は、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売等によって消費者向けビジネスを営む企業に適用される法律です。
現場の従業員が違反行為を行った場合、その従業員本人だけでなく、企業(法人)も行政処分や罰則の対象になるので注意を要します。
本記事では、特商法に違反した場合に受ける行政処分や罰則の内容、現場で発生しやすい違反のパターン、そして経営陣や管理職が今すぐ取り組むべき防衛策等をわかりやすく解説します。
特定商取引法(特商法)とは
特商法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守るための規制を定めた法律です。
消費者トラブルが生じやすい特定の取引形態を対象に、事業者が守るべき行為規制や、クーリング・オフ等の民事ルールを定めています。
改正が続く特商法と強化される消費者庁の監視
特商法は1976年(昭和51年)の制定以来、社会情勢の変化に応じて改正が重ねられており、近年ではおおむね4〜5年に一度のペースで見直しが行われています。最新の内容を理解していなければ「気づかないうちに違反していた」という事態にもなりかねません。
消費者庁は、2023年9月にデジタル班を設置し、EC事業者への監視を強化しました。令和5年度(令和5年4月~令和6年3月)には、通信販売を行う事業者に対して1,552件もの注意喚起を行っています。
特商法が対象とする7つの取引類型
特商法が規制する取引類型は以下の7つです。
自社が消費者向けのECサイトを運営していたり、サブスクリプション型サービス・訪問営業・電話営業を消費者向けに行っていたりする場合、いずれかに該当する可能性があります。自社の事業形態についても、今一度確認しましょう。
| 取引類型 | 具体例・別称 |
|---|---|
| 訪問販売 | 自宅訪問・キャッチセールス・アポイントメントセールス |
| 通信販売 | ECサイト・カタログ通販・テレビショッピング |
| 電話勧誘販売 | テレマーケティング |
| 連鎖販売取引 | マルチ商法 |
| 特定継続的役務提供 | エステ・美容医療・語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相談所 |
| 業務提供誘引販売取引 | 「在宅ワークで稼げる」と称して先に物を買わせる取引 |
| 訪問購入 | 出張買取サービス |
現場で発生しやすい特商法違反の主な行為と具体例
特商法は各取引類型に応じて細かく遵守事項や禁止事項を定めています。
ここでは、特に現場で起きやすい代表的な違反行為を取り上げて解説します。
管理職は、「自分のチームで起きていないか」という視点で読み進めてください。
名称や勧誘目的等の明示義務違反
事業者が消費者に対して訪問販売や電話勧誘販売等を行う際には、事業者名や勧誘の目的等を消費者に告げることが義務付けられています。
訪問営業や電話営業の現場でよく見られるのは、「まずは話を聞いてもらおう」と商品・サービス名や目的を曖昧にしたまま話を進めるケースです。このような勧誘は特商法違反に該当し得るので、注意を要します。
営業用のトークスクリプトを準備する場合は、消費者に対して特商法上明示すべき事項を確実に伝えるパートを設けましょう。
不実告知・事実の不告知
特商法が適用される取引について、事業者が消費者に対して勧誘する際には「不実告知」や「事実の不告知」をしてはなりません。
・不実告知:商品やサービスの内容、価格等の取引条件について虚偽の説明をすること
・事実の不告知:消費者に不利な事実(解約に費用がかかる、自動更新がある等)を意図的に伝えないこと
例えば、「いつでも解約できます」と伝えながら実際には解約手数料が発生する仕組みになっている場合は、特商法違反の不実告知に当たります。また、サブスクリプション(サブスク)の自動更新を契約時に説明しない場合は、事実の不告知として特商法違反に当たる可能性があります。
管理職としては、現場の営業担当者等が不実告知や事実の不告知をしないよう、必要な対策を講じなければなりません。具体的には、営業マニュアルに説明すべき事項や説明時の注意点等を明記したうえで、その内容を正しく理解させるための研修を行う等の方法が考えられます。
威迫・困惑行為
消費者を威迫し、困惑させる勧誘行為は禁止されています。
例えば以下のような言動が該当します。
・「今日中に決めないと、この価格では提供できません」
・「断るならその理由を説明してください」
・帰宅を求めても居座り続ける等の行為
こうした言動は、成果を急ぐ営業担当者が無意識にとってしまうケースも少なくありません。
管理職が「数字さえ上がればいい」という雰囲気を醸成しているチームでは特に発生しやすく、組織文化そのものを見直す必要性が高いでしょう。
書面交付義務違反
特商法が適用される取引については、契約締結時等に重要事項を記載した書面を消費者に交付することが義務付けられています。例えば、次に挙げるような場合は特商法違反に当たります。
・書面を交付せず、口頭だけで説明する
・記載すべき事項の記載が欠けている書面を交付する
・虚偽の記載がある書面を交付する
特にクーリング・オフが認められている取引については、契約書面を交付しないとクーリング・オフ期間が進行せず、消費者はいつでもペナルティなしで契約を解除できる状態が続きます。事業者としては、確実に契約書面を交付することが大切です。
「昔からこのフォームを使っている」「チェックしたことがない」という場合は非常に危険です。法改正によって記載事項が変わることもあるため、テンプレートの定期的な見直しは必須といえるでしょう。
誇大広告・虚偽広告
著しく事実と異なる表示や、実際よりも著しく優良・有利であると誤認させるような表示は禁止されています。
ECサイトの商品説明・ランディングページのコピー・SNS広告のクリエイティブ等では特に注意が必要でしょう。
「業界No.1」「効果が実証された」「○○比◎◎%改善」といった表現は、根拠のないものや誇張されたものであれば違反になり得ます。
マーケティング部門が作成した広告素材が誇大広告や虚偽広告に当たらないかどうか、コンプライアンスの観点からチェックする仕組みを整備することが重要です。
近年の法改正における注意点
特商法は近年も改正が続いており、主に以下の2点への対応が求められています。
1.通信販売の強化:最終確認画面での表示義務(2022年6月施行)
ネット通販において、消費者が注文を確定する前の「最終確認画面」に、契約内容・分量・価格・支払時期・解約条件等の所定事項を表示することが義務付けられました。
2.書面の電子化(2023年6月施行)
従来は紙の書面交付が原則でしたが、消費者の承諾を得た場合に限り、電子メールやURL等での提供が認められるようになりました。電子交付をする場合も、紙の書面で交付する場合と同様に、特商法上の記載事項をすべて記載・明示する必要があります。
特商法に違反した企業が負うリスク行政処分と罰則の種類
特商法に違反した場合の制裁は、「行政処分」と「刑事罰(罰則)」の2種類があります。どちらも企業経営に甚大な影響を及ぼすものです。
以下、「行政処分」と「刑事罰(罰則)」に分けて解説します。
行政処分(是正措置等の指示・業務停止命令・業務禁止命令)
消費者庁・経済産業局・都道府県が事業者に対して行う処分で、以下の3種類があります。いずれも事業者名と違反行為の内容が公表されるため、社会的信用の失墜につながるおそれがあります。
是正措置等の指示
違反行為の是正や消費者の利益の保護、再発防止等の措置を指示するものです。指示を無視して違反を継続すると、より重い処分につながります。
業務停止命令
事業の全部または一部を、最長2年間にわたり停止することを命じる処分です。
ECサイトの閉鎖・営業活動の停止等を強いられるため、売上の減少や業績の悪化に直結します。
業務禁止命令
業務停止命令を受けた事業者の役員等に対して、停止期間と同じ期間、同種業務への従事を禁止する処分です。例えば、別法人を立ち上げ同種業務を続けるといった脱法行為を防ぐことを目的としています。
刑事罰(拘禁刑・罰金刑)
違反行為の内容によっては、行政処分とは別に刑事罰が科されることもあります。主な罰則対象行為と法定刑は次のとおりです。
第70条:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(または両方)
・不実告知・故意の事実不告知・威迫困惑行為・目的を秘した勧誘
・最終確認画面における契約事項の表示義務違反
・業務停止命令・業務禁止命令への違反
第71条:6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(または両方)
・書面交付義務違反(交付しない・記載すべき事項が漏れている・虚偽記載をする)
・主務大臣による指示への違反
・報告の拒否・虚偽報告・検査拒否等
第72条:100万円以下の罰金
・誇大広告・虚偽広告(著しく事実に相違する表示や誤認させる表示)
・電子メール広告のオプトイン規制違反
・電子メール広告に係る記録の作成・保存義務違反
・申込書面や申込画面における誤認させる表示
・通信販売における承諾等の通知義務違反
・連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引に係る広告の表示義務違反
・前払取引に係る書類の備付義務違反・不正記載・閲覧や謄抄本の交付の拒否
【管理職必読】従業員の違反で企業が罰せられる「両罰規定」
特商法第74条には、「両罰規定」が定められています。
違反行為を行った従業員個人が罰せられるだけでなく、その従業員が属する法人(企業)にも罰金刑が科せられるという規定です。業務停止命令・業務禁止命令への違反に対しては「3億円以下の罰金」が科されるほか、その他の違反行為も両罰規定の対象となります。
管理職の立場からすれば、「部下が知らずに違反していた」では済みません。組織として法令遵守の仕組みを整備し、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めることが、管理職に課された責任といえるでしょう。
特商法違反を未然に防ぐために企業(管理職)が取るべき3つの対策
特商法違反を未然に防ぐには、違反が発生しないような組織体制を整備するとともに、日常業務で消費者と直接接する営業担当者やマーケティング担当者まで、組織の全層にわたって特商法に関する理解を底上げすることが不可欠といえます。
管理職はその推進役として、以下の3点に取り組みましょう。
法定表示・書面の整備と定期的な点検
Webサイト・広告・注文確認画面・契約書・利用規約等を特商法の要件を満たす形で整備したうえで、定期的に点検する仕組みを作りましょう。
特商法は頻繁に改正されるため、一度整備すれば終わりではありません。法改正のたびに内容をアップデートすることを、組織のルールとして明文化することが重要です。
社内規程・マニュアルの整備と全従業員への周知
コンプライアンス規程や、特商法への対応を盛り込んだ業務マニュアル等を整備し、全従業員に周知しましょう。
特に現場での違反リスクが高い営業・マーケティング・CS部門の従業員には、それぞれの部署に特化した注意事項を明示することも有効です。
「規程はあるが、読んでいる従業員がほとんどいない」、「規程の存在を知らない」という状況ではまったく意味がありません。
管理職が折に触れてルールを確認する機会を設け、理解度の把握や向上を図る仕組みが必要です。
継続的な従業員研修の実施
特商法は改正のたびに規制内容が変わるため、一度きりの研修では対応しきれません。
新入社員研修での初期教育はもちろん、法改正のタイミングや年に一度の定期研修等、継続的に学ぶ機会を設ける必要があります。
座学で「知っている」状態と、実務で「正しく行動できる」状態には大きなギャップがあります。
繰り返し学習することで、知識を行動に活かせるようになります。
特商法対策の研修に「eラーニング」が効果的な理由
継続的な研修が重要とわかっていても、「集合研修の調整が難しい」、「教材を更新する人手がない」、あるいは「誰がどこまで学んだかを把握できない」といった現場の課題を抱えている企業は少なくありません。
そうした課題を解決する手段として、近年注目されているのがeラーニングの活用です。
受講状況の可視化による確実な「未受講者」へのフォロー
紙のテキスト配布や集合研修では、誰がどこまで学んだかを正確に把握することが困難です。しかし、eラーニングシステムであれば、受講完了状況・テスト結果・受講日時をシステム上で一元管理できます。
「全員に配布した=全員が理解した」ではなく、「誰が受講を完了し、誰がまだ受講していないか」を可視化することで、未受講者への確実なフォローが可能になります。
組織として「特商法研修を全員が完了した」という記録を残すことは、万が一の際に企業の適切な教育体制を示す証拠にもなります。
法改正に伴う「教材アップデート」の手間とコスト削減
特商法のように頻繁に法改正が行われる分野では、その都度テキストを作り直す作業が人事・総務担当者の大きな負担になります。
外部のeラーニングサービスを活用すれば、常に最新の法規に対応したコンテンツを、自社での改訂作業なしに利用できます。
法改正への対応漏れリスクを低減しながらコストも削減できる点は、特にリソースの限られた中小企業や、コンプライアンス専任担当者がいない組織にとって大きなメリットといえるでしょう。
現場の業務を止めない「すきま時間」を活用した効率的な学習
営業・マーケティング・CS等、日々業務に追われる現場の従業員を一堂に集める集合研修は、日程調整や業務の中断という大きなコストを伴います。
eラーニングであれば、パソコンやスマートフォンから、各自のペースで、すきま時間に受講することが可能です。
現場の負担を最小限に抑えながら、確実なリテラシー向上を実現できる点が、eラーニングを研修施策として採用する大きな理由といえます。
まとめ
特商法違反は「現場の担当者個人の問題」にとどまらず、企業(法人)そのものが行政処分や罰金刑を受けるリスクがある経営レベルの問題です。
・行政処分には主務大臣の是正指示、最長2年間の業務停止命令、役員への業務禁止命令がある
・刑事罰は最大3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(または両方)、法人(企業)にも最大3億円の罰金が科される
・消費者庁はデジタル班を設置し、EC事業者を中心に監視を強化中
こうしたリスクを組織として管理するには、規程整備・定期点検・全従業員への継続的な研修という3つの施策を組み合わせることが有効です。
eラーニングを活用した研修は、企業のコンプライアンス研修を強力にサポートします。
サイバー大学が提供する「Cloud Campusコンテンツパック100」には、コンプライアンス分野のeラーニング教材が充実しています。
「違反事例で学ぶコンプライアンス基礎セミナー」では実際の違反事例をもとにビジネスパーソンが知っておくべき法令を実務に即して学べるほか、「管理職のための”魂”のコンプライアンス」では不祥事が起きる組織的なメカニズムと、管理職として取るべき行動を体系的に習得できます。
まず自社の研修体制を見直し、継続的なコンプライアンス教育の仕組みづくりから着手してみてはいかがでしょうか。
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